チャム姉貴「…どいてください」
ロシアニキ「いーやっ」
・
顏が近い…
・
怖い怖い怖い怖い
・
何されるか分からない
・
ロシアニキ「ねぇ、」
・
チャム姉貴「ひッ」
・
ロシアニキ「そんな驚かないでよ…可愛い。」
・
チャム姉貴「…可愛くないよ」
・
ロシアニキ「チャム姉貴って呼んでいい?」
・
チャム姉貴「…構わないよ」
・
ロシアニキ「ん。じゃロシアニキって呼んでもらっていい?」
・
チャム姉貴「…初対面じゃないけど…
今日初めて喋っていきなり縛る人の事を
下の名前呼びしたくないんですけど…」
・
ロシアニキ「あれ?言うこと聞かないと
襲うけど???」
・
チャム姉貴「…なんで私なんですか?」
・
ロシアニキ「なんとなく?」
・
チャム姉貴「顏ですか。可愛くもないのに」
・
ロシアニキ「十分可愛いって。顏もあるけど他にもある」
・
チャム姉貴「…なんですか。」
・
ロシアニキ「いやだね、教えないし」
・
ニカっと笑った顏が
・
少しでもカッコいいって思った自分を
・
認めたくない
まとめだからジャンルごちゃ混ぜだよ
恋愛ものかなーって思って開いたら……まさかこうなるとは。
これはもう天才としか言いようがない。
ファッ!?
ロシア兄貴、こういう才能もあったのね。
こんなのもあるよ
天界。薔薇の咲き乱れる美しい庭園に、上級天使である男は愛弟子とともに散歩していた。
大きな白い翼をもち、銀色のウェーブのかかった猫耳をかきあげて、ローブが風でたなびく。両手で大きな書物を抱えたままロシファーは、羽根で目元を隠しながらもつかず離れすついていく。
庭園の中央に、水をたたえる泉があり、小鳥たちが水浴びをしている。その淵に腰かけると、ロシファーは話し始めた。
「天使にはね。結婚という概念も性別だってないんだ。愛する神のためにいきること。だけどね、ポーランド君。天使にも罪を犯すと堕天する」
幼い子供だったロシファーはポーランドに問い返した。
「堕天すると、どうなってしまうのですか? 死んでしまうのですか?」
「そうだね。天使ととしては死んでしまうかもしれないけれど、天使にも地上に降り立った時には、曲がりなりにも人として生きるんだ。大小かぎらず制欲も、疑似恋愛もする。それは愛を知るために必要なんだ。徳をつめば、また天界へ戻ってこれる」
「愛……徳……人とは難しいものなのですね」
大きな本を抱えたまま、うなってしまうポーランドに微笑みかえる。
「もし、君が天界から離れたとしてもね。何人と交わらなければ、君は人を殺めたとしても、清らかで、いつだって、ここへ戻ってこれる」
「交わる?」
「そう性交渉というべきかな。性的な欲求を他者とつながることで解消している行為のことだよ」
真っ赤になった教え子を、ロシファーは優しく見守る。
「だけど、一度とて、交わってしまえば、君は純潔を失い、堕天する。永遠にね。だから、覚えていなさい」
さすがロシアニキ
面白かったよ
天才ですか 別世界に飛んで行ってたよ
薄暗い部屋の中、むせかえるような錆びた鉄の匂いでニンジャラは目を覚ました。
「……っ!? ここは……?」
ぼんやりとした頭を急速に覚醒させながら、条件反射のように身体を飛び起こそうとして、身体の動きが封じられていることに気付く。
両手両足に頭を、ベルトのようなもので完全に固定された上で台の上に寝かされており、上手く力を入れることさえ難しい。ご丁寧に両腕については肩の付け根と手首をしっかり固定することで自由に腕を伸ばすことすらままならない状態となっている。
「これは一体……? 拙者は、ARMS協会の定期診断を受けていたはずでは……?」
「……ふむ。覚醒までの時間は2時間34分と52秒……か。」
無機質に淡々と時間を読み上げる声。その声の方向にニンジャラがなんとか視線を向けると、そこには白衣にマスク、ご丁寧に薄手のゴム手袋まで装着した男が立っていた。
「その白衣のデザイン……。ARMSラボの連中で御座るか」
「なるほど、覚醒直後にしては随分と頭が冴えている。流石は羅仙忍術大学の首席にしてARMS能力にまで目覚めた寵児……といった所か」
鋭い視線を送り続けるニンジャラには目もくれず、慣れた手つきでバインダーに何重にも重ねられた紙をぺらぺらとめくりながら逐一何かを書き込んでいく男の様子に、ニンジャラはこの男が、いや、ARMSラボという組織が、自身の身体から何らかの情報を収集、研究する為にこうして拉致、拘束されているのだと検討を当たりを付けた。
「……このような手段を取らずとも、ARMS協会とラボは協力関係にあり、情報提供も惜しまず行われていると聞いている。……貴様、一体何の目的でこんなことをしているで御座る」
――男の手が止まった。
「ハハ、ハハハハハハッ! これは面白い! この状況で私と言葉遊びをしようとでも言うのかね? ……データ収集の邪魔だ。『人形』は『人形』らしく黙っていたまえ」
そこで初めて、ニンジャラはバインダーから視線を外した男と目が合った。
――ゾクリ。
大学での厳しい修行でも、ARMSファイターとして臨んだ試合の絶望的な局面でも感じたことのない悪寒が身体を走る。目の前の男は、今まで見てきたどの相手とも違う。文字通り、自分のことをただのモノとしか見ていない。ただ視線を合わせただけで、ニンジャラはその異質さと歪さを敏感に感じ取っていた。
「貴様は、一体……!?」
「フン……。とりあえず、見て取れるバイタルチェックに問題は無いようだな。この状況を前にして脈拍も呼吸も随分と安定している。『他の連中』と違って君は実に冷静で素晴らしい。これからのチェックの間もその調子でいてくれると助かるのだが」
恐らく、ニンジャラを拘束している留め具のどこかに脈拍などを図る計器も備え付けられており、それが背後の壁に表示されているのだろう。男の視線の動きからそれを察したニンジャラであったが、それ以上に聞き逃せないことを目の前の男は口走っていた。
「貴様……! 今、『他の連中』と言ったで御座るか!? まさか、拙者だけでなく他の仲間達まで……!」
「……だからどうしたというのだね? ちょっと黙っていてくれないか、次の検査項目の準備で私は忙しいんだ」
カチャカチャと音を立て始めた男の手元を固定された頭で必死で見ようとしたニンジャラは、男の手元にあるモノを見て思わず身体を強張らせてしまった。
「な……!? 貴様、それは……!?」
――螺旋状にぐるぐると渦巻く、燃えるような橙色をした光彩。
男の手には、『見覚えがあるにも関わらず、何故だか誰のものか思い出せない眼球』の標本が握られていた。
「そうそう、そうしてしっかりと目を見開いていてくれると私も助かるよ。やはり君は協力的で素晴らしい。一々泣き叫ばれたり目を閉じられるたりするとこちらも無理やり黙らせたりなんだりと手間だからね。……ふむ。外見上はやはり完全なARMS能力者のそれになっているか。素晴らしい結果じゃないか……!」
「貴様……! その瞳、一体誰のモノで御座る! 斯くなる上は……っ!?」
――ニンジャラがここまで異常なほどに冷静を保っていられたことには、いくつかの理由があった。
一つ目に、彼がまだ学生の身とは言え厳しい修行を積んできた忍びの端くれであるということ。そしてもう一つ。彼の得意な忍術が、その場から消え失せ離れた所に瞬時に移動してのける、霞隠れの術であるというということ。つまり、他のファイターとは異なり、彼だけはどれだけ厳重に四肢を固定した所で逃げようと思えばいつでも逃げられる。だからこそ彼は、敢えて成す術もないフリをして、相手の出方を伺っていたつもりであったのだが……。
「何故だ!? 何故術が発動しない!」
「……無駄だよ。君の忍術とやらは、本来その両手で印を結ぶことで発動させるものだろう? それをARMS能力を覚醒させた状態で、アームを装着した腕でやってのける才能は大したものだと思うがね、そもそも『その手指が無くなっちゃったら』、発動しようがないのは自然の摂理だとは思わんかね? 超常の術を扱う君にこんなことを言うのは随分と皮肉めいているがね……」
そう言って、男は無造作にニンジャラの顔に向かって『何か』を放り投げた。ポトリと自身の頬にぶつかり転げ落ちていったモノは最早ニンジャラの固定された頭では視線で追うことも出来なかったが、ニンジャラの忍びとして鍛えられた類稀なる動体視力は、その『何か』が宙を舞い、自身の顔に目がけて落ちてくるまでの間に、それが何であるかをしっかりと捉えていた。捉えてしまっていた。
「拙者の……指……?」
そこで初めて、唖然とした表情を見せたニンジャラは、がっしりと拘束され力さえ上手く入れることのできない両腕を、その先にあるはずの自らの手指を右、左と凝視した。
「左手だよ。……君、利き手は左だろ? 筋肉の付き方でわかるんだ。だから利き手の人差し指を切除させてもらったんだ。その方が万が一逃げ出されるようなことがあっても対処しやすいと思ってね。本当の君は凄まじい修行を受けて来たんだねぇ。麻酔の効きがあり得ない程に悪くて最初どれだけ驚かされたことか。君の痛覚を遮断させる為に必要な麻酔の量は常人の20倍。部分麻酔とは言え、普通なら心臓が停止する量だよ?」
そう言って、男は再び楽しそうに笑いながら、ニンジャラの左手の人差し指があったであろうその付け根を思い切り指で押した。
「……ッ!」
「すごいよねぇ君。悲鳴、上げないんだもんなぁ。麻酔がかかってたって、これだけ思いっきり刺激してやれば鈍い痛み位は走るものなんだがねぇ」
淡々とした口調の中に、喜びの感情が滲み出ているのが見え、ニンジャラは戦慄する。
――この男は、異常者だ。
恐らく、ARMS能力を研究するという目的自体に嘘偽りはない。しかし、それ以上に目の前の男はこの状況を心の底から愉しんでいる。ニンジャラが痛みを、そして指を切除されたという絶望を歯を食いしばって堪えていることをこの上ない娯楽を見ているかのような目で見ていることを、ニンジャラは悟ってしまった。
「さて、ちょっとしたお遊びは終わりにして、次は血液検査と行こうじゃないか。……こういう時にARMS能力者は不便だよねぇ。腕の血管を使えないんだから」
そう言って、男は慣れた手つきで、ニンジャラの首目がけてぽっかりとその先に穴の空いた注射針を近づけていく。
――今しかない。
そこで再び、ニンジャラは絶望を知ることになった。厳しい修行により、常に胃の中に忍ばせている含み針を入れた小さな筒が、いくら吐き戻そうとしても出てこないのだ。
「ああそうか、君はいつも胃の中に含み針を隠し持っているんだっけか。悪いけど、いくら探しても君の胃の中に針は無いよ。残念だったねぇ」
――ブスリ。
あまりにも無感情にそう言い放った男は、そのまま何のためらいもなく、ニンジャラの首に針を差し込んだ。ドクドクと、心臓が鼓動を打つたびに自身の首から勢いよく体温が流れ出ていく。その感覚に、ニンジャラは己の意識が遠のいていきそうになるのを必死で堪える。男は、透明なパックがニンジャラの血液によって紅く膨らんでいくのを恍惚とした笑みを浮かべながら眺め、わざとニンジャラに見える位置でぷらぷらと揺らして見せた。
「ふむ。とりあえずはこの量で充分か……。流石の忍びも身体の防衛反応まではどうしようもないんだねぇ。首のような重要な位置にある血管はねぇ、ダメージを受けたり一定以上の血液の流失を察知すると、人体は意図的に血流を悪くして貧血状態を起こし、それ以上の失血を避けようとするんだ。面白いよねぇ」
普段の己であれば、この程度の流血で動揺するはずがない。しかし、目の前の男の異常さと、目の前でどんどんと紅く膨らんでいく血液のパックを目にすることで、ニンジャラの身体は否応なしに防衛反応を起こしてしまったのだ。
血を喪った寒気と、貧血により白いノイズで埋め尽くされるような視界。その中でもニンジャラは必死で頭を働かせる。まだ首に採血針とそこから伸びるチューブは刺さったままではあるが、男がパックを外すと同時にチューブの弁も止めているのをニンジャラは見逃さなかった。あのパックの量からして、奪われた血液は500~700mlといった所であろうか。成人男性の献血量を考えればそれよりやや多い程度であり、この程度であれば失血死に至ることは無い。
だから怯えずともいいのだ。だから早く身体を、体調を元に戻し、この状況からどう逃げ出すのか、そして同じ目に合っているであろう仲間たちをどう救い出すのかを考えなければならない。他の仲間たちと違い、ニンジャラは忍びとして、このARMS能力が無くとも戦えるだけの力も、修羅場を潜り抜けられるだけの精神力も伴っているはずなのだ。
そう、ニンジャラは己に対し、心の中で必死で叱咤激励を飛ばした。
「本当はねぇ、血液だけでも作れた方がよっぽど楽なんだけどねぇ。こうして一々素体から抜き出さなきゃいけない辺り面倒だよねぇ。……君もそう思わない?」
血液のパックを大事そうにどこかに運び、戻ってきた男はそうニンジャラに質問を投げかけた。
「拙者の血液を何に使うつもりで御座る……!」
「何って……そりゃあ人命救助だろう? 血液の使い道なんてそれ以外考えられないじゃないか。それとも、もう一つの使い道の方を聞きたいのかい? 一般人の血液を丸ごとARMS能力者の血液と入れ替えることで人工的にARMS能力の覚醒を促すって奴。あれはとっくの昔に何度も試したけど、結局何の成果も出なかったARMSラボきっての失敗って奴だよ。現に僕の腕はいつまで経っても1ミリも伸びやしない。僕だけでもかれこれ5回は試したんだけどねぇ」
この男は狂っている。ニンジャラはそう思った。そんなニンジャラの胸中はお構いなしに、男は楽しそうに話を進めていく。
「さてさて、後の採集はひとまず置いといて。僕の中での本日のメインイベントに取り掛かるとしようじゃないか!」
そう言って男が取り出したのは、注射器やメス、ピンセットといった道具に加え、ペン、針金、鉛筆やハサミといった文房具の数々であった。
「これ以上、拙者に何をしようというのだ……!」
「何って、実験に決まっているだろう?」
男は何故そんな質問が飛んできたのかと不思議そうな表情で答える。
「君の腕、鎖だろう? 他のファイター大きく異なるのが、鎖は一続きの物質ではなく、小さな金属の輪が互いに繋がり合って一つの紐状になっているという点だ。……僕は君の腕を見た時からずっと気になっていたんだ。その鎖のつなぎ目のひとつひとつにこうやってモノを挟み込んで、その状態で能力を制御しているマスクを取ってしまったらどうなるんだろう……ってね」
――ARMS能力者が装着しているマスクは、らせん状に変質した腕をその状態で固定し、安定化させる力を持っている。逆に言えば、マスクを外されてしまったARMSのうりょくしゃたちは、自分の意思で腕を維持することが出来ず、普通の人間の腕に戻ってしまうのである。
男は恍惚とした笑みを浮かべながら鎖のつなぎ目に一つ一つ、メスや注射器、ピンセットなどの道具を差し込んでいく。
「普通のファイターであれば、らせんを描いていた腕が閉じて元の腕のサイズまで縮んでいく過程で異物が押し出されてしまう。それはもう過去に何度も研究済みだ。無理やり能力を発言している腕に穴をあけたりしてモノをねじ込んでおくと、ちゃんと刺さった状態でヒトの腕に戻ることも確認している。後は君の鎖ような稀なモノに変質させたケースでどうなるかを確認するだけなんだ。ああ、この研究は実に十数年ぶりだ! まさかあの実験の続きが行える日が来るだなんて夢にも思っていなかった! ……さあ出来た。いくぞ、いよいよ外すぞ? さあどうなる、どうなる!?」
「やめ、やめろッ!」
――バサッ。
男の手で勢いよく外されたマスクが、そのまま宙を舞って床に落ちる。その瞬間、ニンジャラは自身の腕が肩の付け根の部分から巻き取られていくかのように縮まっていき、本来の人間のそれに戻っていくのを感じた。
「……グッ!」
初めは、違和感であった。歯と歯の隙間に、モノが挟まったかのような。手足の指と指の間に何かを挟み込んだかのような。そんな不快感が、無造作に物を差し込まれた鎖の部分が人間の腕に戻る度にニンジャラの腕を走っていく。それが、はっきりとした痛みに代わったのは、完全に腕が人間のそれに戻った瞬間であり、ニンジャラは、それらの道具が自身の筋肉の筋と筋の間にしっかりと咥え込まれているのを感じた。
「……素晴らしい! 完全に腕の中に全ての物が取り込まれている! ……どうだね? 痛みはあるようだが、一体どういう感覚なのかね? さあ言いたまえよ、答えてくれよ、説明しろよ、教えろよ、さあ早く! ……言えって言ってるだろっ!」
「グッ! ガアアァ!」
腕中に走る痛みをただただ歯を食いしばって堪えていたニンジャラに対し痺れを切らした男が、ヒステリックな甲高い声で怒りを露わにしたかと思うと、『ダンッ!』とニンジャラが横たわる台を力の限り叩きつけた。
思わずビクリと全身に力を入れ、身じろぎしてしまったことで、腕中に刺さったモノが身体の中で軋み、ニンジャラはそこで初めて悲鳴を上げてしまった。
「ハァ……ハァ……。怒りだなんて無駄なことで僕のエネルギーを消費させやがって……! しかし、これでわかったぞ……。その痛がり方から察するに、血管にダメージはいっていないな。骨に貫通している様子もない。ということは恐らく筋肉の繊維と繊維の間をすり抜けるように、まるでそこに初めから異物が存在していたかのように元の腕が復元されたようだな。……だから、こうして動かさなければ異物感と最低限の痛みですむが、ちょっとでも動かすと、こうだ!」
「……ッ! アガァ……!」
男がニンジャラの腕を力いっぱいに揺らす度、腕に埋まった道具の数々が軋み、凄まじい痛みがニンジャラを襲う。
「なるほど……。そして、再びマスクを付けてやれば腕は元通り、か……。いや、私が揺さぶったことで受けたダメージ自体は身体に残りそうだな……」
再び考察に入り、ぶつぶつと独り言を呟き始めた男に対し、ニンジャラはついに、ボソリと本音を漏らした。
「ハァ……ハァ……。狂っているで御座る」
「……なんだと?」
考察を中断させられたからか、それともニンジャラのその一言が男の逆鱗に触れたのか。、今までの淡々とした様子をかなぐり捨て、血走った目でニンジャラの腕に刺さったペンや注射器をぐりぐりと力任せに揺さぶり始める。
「『人形』ごときが! 人間様を見下してんじゃねぇよ! 」
「……ッ! ……!」
息を吸う暇さえ無いほどの痛みの嵐に、ニンジャラは悲鳴を上げることすら出来なくなる。
「……そうだ、今お前が感じているその痛み。実際に刺された痛みとどっちが痛いのか確認しないとなぁ? ハハ、私としたことが検証すべきことを忘れてしまうとは。いやぁうっかりしていた……なぁ!」
――ブスリ
男が怒りのままにニンジャラの二の腕に突き刺したメスは、その勢いも相まってやすやすと皮膚をそして筋肉を切り裂き、そして骨にぶつかった。ニンジャラは、骨にメスが突き当たる音と衝撃が自身の身体の中を伝って全身に駆け巡る衝撃と焼けつくような痛みに全身の筋肉を引き攣らせた。
「どうだ、答えろよ……? 今のとこれと、どっちが痛いんだよ? なあおい答えろよ! 忍びのエリート様だろ? 天から選ばれたARMS能力者様なんだろ!? さっきまでの威勢はどうした? 指が一本無くなった程度で術が使えない気持ちはどうだ? 胃の中の針まで取り除かれていた時の絶望はどれ程だった? ほら、言ってみろよ……!」
全身が引き攣り、脳の神経が焼け付くのではないかという程の痛み。それでもニンジャラは意識を失わず、歯を食いしばって耐え続けていた。その顔は痛みと息を満足に据えていない酸欠により青ざめ、止めどなく流れ出た涙と鼻水でぐちゃぐちゃであった。痛みを堪える為に何度も歯を食いしばるうちにずたずたになってしまった舌や内頬、唇から流れ出た血が泡になってあちこちに飛び散っている。それでもニンジャラは意識を失わず、ただひたすらに心を無にして耐え忍んでいた。
「ハァ……ハァ……ハハ、ハハハハハハ! 痛みで何も言えないか? 無様だなぁ! 天下のARMS能力者様が、腕を封じちまえばこのザマだ! 能力持ちってだけで協会から金貰って面白おかしく腕を伸ばして跳ねまわって人気者。結局俺達ただの人間と何ら変わらねぇ、取るに足らねぇクズ共が偉そうにふんぞり返ってんじゃねぇよ!」
そう言い捨てた男が、ニンジャラの顔に向かって唾を吐き捨てたかと思いきや、ニンジャラの視界から消えた。ようやくこの終わりの無い拷問から解放されるのかとついつい気を緩めたニンジャラの顔に、唐突に何かが被せられる。
「ふう……。ついつい感情的になってしまうのは私の悪い癖だ……。人の手によるARMS能力の発現。その第一人者になる為、私はこんな所で燻っていてはいけないのだ……! 協会の連中がヘッドロックなどというチンケな餌に喰らいついている今だから、こうして検体を、研究施設を確保できたのだ……! 結局生身の人間にスーツを着せた所でそれはただの外付け。アレを生み出したことは決して無駄ではなかったが、やはり真の意味でARMS能力者をこの手で生み出したと言う為には、ARMS能力発言の因子となる何かを見つける以外方法は無いのだ……!」
男が被せたのはつい先ほど床に投げ捨てられた、ニンジャラのマスクであった。マスクを被せられたことにより、ニンジャラの腕が再び鎖に戻っていき、ひとつ、またひとつと無理に差し込まれ、朱く染まった道具たちがその場に落ちていく。
「もう君に用はない……。どうせ代わりは『いくらでも用意できるようになった』。君はもう、君の大切な仲間たちと同じようにゆっくりと眠るが良い……。なに、運が良ければ君の身体の一部位は再利用されるチャンスはあるさ……。ハハ、ハハハハハ……」
そう言って、男はニンジャラが拘束されていた台をぐるりと反転させ、ニンジャラの髪の毛を掴んで無理やり持ち上げ、正面に広がる光景を見せつけた。
「な……。なんだ……これは……!?」
――そこに広がっていたのは。
メタリックブルーの裏に燃え滾るのような真紅の地金の螺旋。ピンクと白の可愛らしいストライプが映える、ビロードを彷彿とさせる品の良いリボン。繊細で華奢な腕と、その対となる猛々しく力強い龍の鱗。
「あれは……、あの腕は……。スプリングマン殿にリボンガール殿、それに麺麺殿も……」
「他のコレクションも見たいかい? 安心したまえ、君ももうすぐあちらに並ぶ側になるんだ。そうすれば好きな時に好きなだけ眺めていられるようになるだろう? まあ、眼球は別の場所での保管となるから眺められるというのは嘘だけどね、ヒヒヒヒヒッ……」
そして、男はいそいそとニンジャラの首に刺さったままになっていた採血針の先に、再び空の輸血パックを取り付け、弁を開けた。
「そう悲しむことはないさ、あれは『偽物』だ。君にだけ特別に教えてあげよう……。君達はクローンなのだよ。協会の連中に紛れ込んで『本物』から採集した血液や髪の毛から培養された、ただの『人形』なのさ。協会側には万一に備えてただ採集した血液を培養して増やすだけだと言ってあるがね。バカな連中だよ。私がでっち上げたARMS能力に目覚めた者の血液型は特殊なものに代わる為、本人の血液をストックしておくことが望ましいという研究をそのまま鵜呑みにしてしまったんだからな! そのおかげでこうして私は血液もその眼球も、そしてARMS能力者の象徴であるその腕を! ぜぇんぶコレクションすることが出来た。これだけの素体を研究し続けることが出来れば! 私自身が私自身の手でARMS能力に目覚めるのも夢ではない! なにせ、素体は手に入ったのだ! これからは素体を増やそうと思えばいくらでも増やすことが出来る! ドクターCの名が世界中に広まるのも時間の問題だ! ハハ、ハハハ、ハハハハハハハハ……」
「拙……者が……クロー、ン……?」
自分が、そして目の前に無残な姿で並べられている仲間たちが、本当の自分ではなく、その遺伝子を使って培養された偽物だと聞かされた彼の胸中に一番初めに浮かんだ感情は、「安堵」であった。
――良かった。これが本物の拙者も、大切な仲間達も、こんな悲劇とは無縁の場所で、いつも通り定期診断を終え、いつも通り本気でぶつかり合い、いつも通り、試合が終われば互いの健闘を称えて肩を叩き合って笑っているのだ。
血を抜かれ過ぎたことで段々と白んでいく景色の隅に、DNAマンが入っていたあの円筒状のカプセルの中に、自身や、仲間たちによく似た肉の塊が、誕生の時を待つ赤子のようにぴくぴくと蠢きながら眠っているのを見つけたニンジャラは、そこで初めて、最初に見せられた眼球が『自分自身の物』であったことに気付き、そりゃあ見覚えがあるのに、あの瞳は誰の物だったか思い出せないわけだ、と力なく笑みを浮かべた。
「ふん……自分がオリジナルでないなら死も怖くない、か。本当に『君』は『いつもいつも』可愛げがない。まあ、他の連中のように最後の最後まで喚かれるよりマシだろうがね。程よい悲鳴は人生の何よりのスパイスだと思っていたが、断末魔の悲鳴も結局聞き飽きてしまえばただの泣き声となんら変わりは無い。今回のように趣向を凝らしてみようと思わない限りは今後はもう眠らせたまま必要な部分を抜き取るだけで十分だな……」
そう言うと、男は無造作にいっぱいとなった輸血パックを引きちぎるように取り去ると、先ほどと同じようにいずこかへしまいに行こうとする。唯一違っていたのは、止血用の弁を止めずに行ってしまったということだ。
「よくよく考えれば、どうせスペアはいくらでも用意できるのだからこうして血液をストックする必要もなかったな……。そうだ、いつもとは違う趣向に付き合ってもらうことになった哀れなニンジャラもどき君に、これは返してあげるとしよう。……ほら、好きなだけ飲みたまえ。このまま放っておけば失血死確定だが、頑張って飲み込んで飲んだ端から身体に巡らせていけばちょっとは生き長らえるかも知れないだろう?」
さも良い思いつきのように男はそう言うと、輸血パックの端に新しいチューブを取り付け、その反対の端をニンジャラの口に無理やり咥えさせた。
「大サービスだ、こっちも咥えておけよ。どっちがどっちのチューブかわかるなら必死で噛んで止めるんだねぇ。そうすれば、出血も止まるからねぇ。ハハ、ハハハハハ……」
血と汗と涙と鼻水と唾液でぐちゃぐちゃのニンジャラの顔に手に持っていた輸血パックを放り投げ、男は部屋を去っていく。
もうどうせ助からないのに。この先の運命は見えてしまっているのに。ニンジャラは言われるがままに、頬に張り付いた輸血パックの温もりを感じながら、咥えさせられたチューブから止めどなく流れ出る己の体液を啜っていく。何度も何度も叫んだことで破れ、ジクジクと焼けるような痛みを放っていた喉が、生温い液体に触れることでその痛みを優しく和らげていく。
誰もいなくなった部屋に1人、そのむせ返るような鉄の匂いに吐き気を催しながら、ニンジャラは、ニンジャラだった人形は、一滴たりとも吐き出してはなるまいと必死で己の胃に流し込む。自分をニンジャラだと思い込んでいた哀れな人形が、本当の意味で物言わぬ人形になり果てるまで、鉄の匂いの立ち込める部屋に、鼻を啜る音と、吐き気を堪えるくぐもった呻きが交互に鳴り響いていた。
「……随分と趣味の悪い研究で御座るな」
「ハハハ……。だが、これでわかっただろう? 私はただ、ひたむきな気持ちでARMS能力を研究しているだけなんだ。『君』が危惧するような、『君たち』を脅かす存在ではないのだよ」
薄暗い部屋の中で、ぼうっといくつもの角度からその部屋を映し出したディスプレイを眺めながら、『ニンジャラ』と『男』は話していた。
「そして、貴様もまた100年前からこうして己を複製して生き長らえているわけか。あの『人形』の言葉では御座らんが、拙者から見ても貴様も『貴様の人形』も狂っているとしか思えんな」
「ハハハ……。あそこで怒り狂っていた『私』と違ってこの『私』は随分と歳を取ってしまったからね。そんな見え透いた挑発にはのらないさ……。ただ、あっちの『私』に言うのはやめてやってくれ。なんて言ったって、彼はまだ未来のある若者だからねぇ。……クククッ」
そう言って、さも愉快そうに顔を歪めて笑う男の目元には、確かに画面上に写っていた男と違って、明らかに年月を重ねた年輪のような皺が幾重にも重なり存在していた。
「ふんっ……。拙者は、貴様が拙者や仲間達に害を及ぼす者でないとわかったのであればそれで十分で御座る。貴様が拙者達に手を出さない限り、もうこちらから接触することは無いで御座る。だから、貴様ももう二度とその面を拙者に見せるな、虫唾が走る」
「これはこれは随分と嫌われてしまったようだな……。私は『君』も、『君の人形』も嫌いではないのだけれどもねぇ。そうだ、もし万が一大怪我でもして四肢を喪うことになったらここを尋ねてくるがいい! いつでもすぐに『代わり』を用意してあげようじゃないか!」
そう言うと、男はさも愉快そうに声を上げ、一人笑い始める。
「拙者は忍びの道に生きるもの。そうやすやすとこの身の一部とて失うことはあるまい。ではな……」
「待ってくれ」
付き合いきれぬとばかりに部屋を出ようと背を向けたニンジャラを、男が言葉で制した。
「せっかくだから最後に聞かせてくれたまえよ。『君』は、『君』が痛めつけられるところを見てどう思ったんだい? 自分が痛めつけられる所を黙って眺めてられる奴なんてそうはいないからねぇ。是非その心中を教えてもらいたいものだ」
やせこけた頬に、皺が刻まれた顔。もはや何歳なのか判断の付かない程に老け込んだその男が、その両目だけはギラギラと輝かせながら尋ねる。
「……くだらぬ。貴様も言った通り、あれはただの『人形』なのだろう? 少しくらい自分に似た人形が泣き喚いていた所で、怒り狂い泣き叫ぶ忍び等おるまい。貴様が何と思おうと勝手で御座るが、『拙者』という存在はこの世界に『拙者』ただ一人に御座る」
そう言い捨て、今度こそ音もなく部屋を出て行ったニンジャラを無言で見送った男は、そのまましばらく佇んだ後に、再び一人、笑い始めた。
「……クククッ。ハハハハハハ! ……『拙者』という存在はこの世界に『拙者』ただ一人、か。これはまた最高のジョークじゃないか。本当に『君』は『いつもいつも』可愛げがない。なあ、ニンジャラ……。ハハ、ハハハハハハ……!」
――薄暗い部屋の中に男は一人。
――その言葉の意味を尋ねる者は、いない。
ロシア兄貴が・・・ほのぼのだと?! 待って嘘だろ?!
僕がグロ系の詩を作ろうかな R-15設定で(R-15作品を作る11歳)
とりあえず期待してるよん♪
いい作品になりそう。
逆に驚かれてて草
よかった…
え?ほのぼの?
グロね〜ないよほのぼの系だから
ん…ここ、どこだろ…。
・
うわ!!!!!!!
・
私もしかしてロシアニキのベッドで寝たの?!
・
急いでベッドから飛び起きる。
・
ロシアニキ「起きた?はよ。」
・
チャム姉貴「おはよう…じゃなくて、今何時?」
・
ロシアニキがスマホを私に突き出した。
・
8:27:32
・
もう8時半…?!
・
急いで帰らないと…!!!
・
ロシアニキ「その必要ないけど。」
・
チャム姉貴「…な、なんで?」
・
ロシアニキ「お前の親友に頼んで、
『今日は柚の家にチャム姉貴が泊ってまーす!』
ってお前の母さんに電話してもらった。」
・
柚…。ホント、いらないこと…
・
ロシアニキ「お前の親友イイ奴だな」
・
チャム姉貴「い、いい人だけど…;
ってアレ?じゃあ、私今日柚の家に泊まるの?」
・
ロシアニキ「え?アホ?本気で言ってます?まだ寝ぼけてる?」
・
…。地味に傷つく。
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ロシアニキ「おれの家に泊まるんだって」
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え?本気??????
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ロシアニキ「ついでに両親は不在でーす。
海外にいまーす((wwwwwww」
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なっ……!!!!!!!!
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ロシアニキがニヤリと笑った。
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な、なんで…
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好きじゃない人と…
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寝ないといけないの?!
ロシアニキ「ふわああああっ!!!」
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チャム姉貴「な、何!今度は…;」
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ロシアニキ「疲れたからおれ、寝るわ。」
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チャム姉貴「疲れたのは私の方だよ。
じゃあ私、帰らせてもらうね。」
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私がスクバを持ち上げたとき。
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ロシアニキ「チャム姉貴。」
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チャム姉貴「うん?」
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ロシアニキ「帰っていいって、言ってない。」
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チャム姉貴「え、でも…」
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ロシアニキ「拒否権ないから。」
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はぁ~…。
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かっこいいけど、、、なんだろ、Sなの?
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ロシアニキ「ん!!!!」
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ロシアニキが手招きしてる。
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こっちへ来い、そうゆう意味だろう。
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仕方なくロシアニキが寝っ転がってるベッドへ行く。
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グイッ
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チャム姉貴「いたっ」
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私はロシアニキに手を引っ張られ
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ロシアニキの隣にあおむけになった。
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ロシアニキ「寝るまでこうしててよ」
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ロシアニキが喋るたびに耳に息がかかって
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何というか…こそばゆい。
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ロシアニキ「うわぁ、顏あっか!」
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チャム姉貴「五月蝿い。」
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ギュゥーーーーーーーっと、ロシアニキが抱き着いてくる。
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ロシアニキに背中を向けていた私は
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くるっと向きを変え
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ロシアニキと向かい合うようにして寝てあげた。
グロに持っていきますか?
ロシアニキ「なんか飲む。」
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チャム姉貴「あ、ありがとう。」
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疑問形じゃなく肯定系で聞く彼の質問は
ぶっきらぼうで、優しかった。
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戻ってきたロシアニキの手にはひとつのコップ。
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ロシアニキ「ん。」
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チャム姉貴「ありがと…」
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私がコップを取ろうとしたら
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ロシアニキはヒョイ、っとコップを上にあげた。
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ロシアニキ「おれが、このままあげると思う?」
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チャム姉貴「…思わない。」
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ロシアニキ「よく分かってんじゃん。」
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するとロシアニキは中に入ってたジュースを飲んだ。
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チャム姉貴「あ、くれないんだw」
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私がちょっと笑ったとき
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顏がグッと上がってロシアニキと唇が触れた。
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ロシアニキの口から私の口へジュースが流れ込んでくる。
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・
ロシアニキ「なぁに、いってんの。
チャム姉貴にあげるために持ってきたんじゃん?」
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だめだ…
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私
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失恋した日に
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恋をした
そうか?
チャム姉貴「んん…ッ!!!」
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ロシアニキ「じっと…してろって」
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抵抗しようにも仕様がない
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手足は動かないんだから
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キスはどんどん激しくなってくる
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ックチュッ…
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クチュ……クチュッ
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息が
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もたない
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しんどい
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苦しい
・
ロシアニキ「ップハ」
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チャム姉貴「な、何…いきなり」
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ロシアニキ「耐えれなかった」
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チャム姉貴「…まだそうたともしてなかったのに」
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ロシアニキ「もう一生しないだろ」
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チャム姉貴「…そうだけど
好きでもない人にファースト…」
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ロシアニキ「…今のファースト…?!まじか」
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なんでか知らないけど
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涙がポロっと出てきた
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ロシアニキ「何で泣くんだよ」
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ロシアニキは手足のロープをほどき
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私の涙を大きな手でふいてくれた
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ロシアニキ「ごめん、なんか、無理矢理」
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ロシアニキがギューっと私を抱きしめる
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その体温が暖かすぎて
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失恋の悲しさを忘れていた
自己責任大好き